『フェルメールの食卓:暮らしとレシピ』

作成者
林綾野著
出版者
講談社
刊年
2011.7

  オランダ絵画の巨匠レンブラントと並び、高い人気を誇るフェルメール。 43歳の若さでその生涯を閉じたフェルメールの作品はわずかに36点しか 残されていませんが、本書の表紙ともなっている「牛乳を注ぐ女」、青いタ ーバンと大きな真珠の耳飾りを身に付けた少女が印象的な「真珠の耳飾りの 少女」などはメディアでもよく取り上げられ、記憶に残っている人も多いの ではないでしょうか。
  本書ではそれらの作品が紹介されるとともに、登場するモチーフにもスポ ットが当てられており、彼の生きた17世紀のオランダの人々の暮らしの一 端を垣間見ることができます。
  窓辺に立ち手紙を読む女性や、テーブルで手紙を書く女主人など、手紙の モチーフは6点の作品に描かれ、当時のオランダがヨーロッパのなかでも識 字率の高い国であったことや、郵便制度が発展し手紙文化が開花したことを うかがい知ることができます。
  タペストリーや装飾をほどこした椅子などの室内インテリア、女性モデル が身につけている衣服も当時の流行を伝えてくれます。
  さらに本書後半では、17世紀に出版された食の指南書を参考に当時の食 卓を再現したレシピ、また、現代のオランダ料理のレシピも紹介されていま す。
  フェルメールの作品を楽しみつつ、オランダの歴史や文化をも味わうこと のできる一冊です。