奈良市街から春日山を越えて東へ向かい、峠茶屋、円成寺を通り、柳生の里に至る道は、「旧柳生街道」といわれている。その道の途中にある山深い道が「滝坂道」で、江戸時代に奈良奉行が切り開いた石畳の道が残っている。
この道沿いには能登川が流れ、石仏が数多く存在する。道を背に横たわる「寝仏」は、上方の斜面に点在する鎌倉期の磨崖仏の一つ、大日如来が落ちて横になったものである。
像高1.6メートルの「夕日観音」は弥勒仏で、夕日に映えることからこの名が付いた。
同じく弥勒仏で、高さ2.3メートルの「朝日観音」は、両側に地蔵仏が配されている。
高円山の頂から差す朝日に、真っ先に照らされることから名付けられた。
石畳が途切れた先の分かれ道に立つ、大ぶりな凝灰岩の地蔵像が「首切地蔵」である。
剣豪・柳生十兵衛の弟子・荒木又右衛門が試し切りをしたという伝説が残っており、首に亀裂が入っている。
恐ろしげな名前とは裏腹に、道しるべとして親しまれてきた。
また、「滝坂地蔵」や「三体地蔵」、国史跡の「春日山石窟仏」のほか、少し足を延ばせば、「地獄谷石窟仏(国史跡)」「芳山(ほやま)の石仏」「五尺地蔵」「笠地蔵」なども見ることができ、滝坂道は石仏の道でもある。
所在地:奈良県奈良市柳生町ほか