「図書館員の気になる1冊」 『: 橋の構造や用途を理解するための実用的な入門書』 エドワード・デニソン, イアン・スチュアート著 ; 桑平幸子訳 (ガイアブックス)2012.10 LIMENCBIB: 548737 最初に橋を作ったのは、誰でしょうか。 古くは、古事記などにも出てくる「天の浮橋」は天上界と地上を結ぶ橋で、イ ザナギとイザナミがその橋に立ち天の沼矛(ぬぼこ)をかき混ぜると島国がで きたと書かれています。そして、その橋が倒れてできたのが「天橋立」(京都 府宮津市)であるという伝説もあります。また、その昔、人々が生きるため、 新しい牧草地を求めて川に渡したであろう1本の木が橋を架けた始まりでしょ うか。普段何気なく渡っている橋は、どんな風に造られているのか気になりま した。 イングランドのタイン川に架かる「ゲーツヘッド・ミレニアム橋」は、世界初 で唯一の傾斜橋として数々の国際的な建築賞を受賞しています。可動式の橋で 、2つの平衡する鉄鋼製アーチ形で構成され、一つは橋床で、傾斜機能を補佐 する釣合いおもりの役割を果たす支持アーチに鉄鋼製のケーブルで連結されて いて、見たことのないような形をしています。面白いのは、自浄式で5分以内 に40度傾き、橋が傾斜すると残ったアーチ型端部のトラップに落ちていく仕 掛けになっている点です。日本の明石海峡大橋も世界最長支間を持つ橋として 紹介されています。 本書は、橋の構造や用途を理解するための実用的な入門書というとおり、第1章 は橋を理解するため、橋の材料、用途、様式について解説されており、第2章 では、各様式別のケーススタディを通してより深く橋を知ることができるよう に書かれています。ポケットサイズとはいえ、専門用語で書かれていますが、 巻末に用語解説があるので、素人の私でも比較的理解しやすく、代表的な橋の 写真と精密なイラストによりビジュアル的にも見て楽しめるようになっていま す。 今まで見ていた橋も、構造や様式を知って見ると新しい発見があることでしょ う。気になった人はぜひ、一度ご覧ください。    (まつむら じゅんこ)