≫奈良県立図書情報館メールマガジン≪ 「Lib Info NARA −奈良県立図書情報館通信」 H19.8.15  No.052 *8月の休館日について  毎週月曜日。また、31日(金)は月末休館日です。 ■==■目 次■==■ ◆ 巻頭言 図書情報館トピックス 情報BOX これも図書情報館 図書情報館−職員独り言 連載「図書情報の文化史」 編集後記 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■巻頭言■ 戦後占領政策と「プランゲ文庫」  1945年8月15日、高見順は日記に次のように記しています。 「夏の太陽がカッカと燃えている。眼に痛い光線。烈日の下に敗戦を知らされ た」 その日は全国的に快晴で、日射しの強いたいそう暑い日であったようです。正 午に玉音放送があり、国民は長く辛かった戦争の終結を知らされました。それ から62年。今では、戦中戦後の激動と混乱の時代を知らない世代が国民の大多 数を占めています。  当館の3階に「戦争体験文庫」と名づけた専門資料のコーナーがあります。 この文庫は、先の大戦の体験、記憶を風化させることなく後世へと伝えていく 場となることを目的として設置されました。1931年の満州事変の頃から1950年 のサンフランシスコ講和条約の頃までの手記、体験記、戦記等の図書や雑誌を 40,000点余り取り揃えるとともに、当時の写真、日記、書簡、証明書類等の実 物資料を活用したテーマ展示も併せて行い、戦争の記憶を多くの人々に伝える 役割を果たしています。 ●戦争体験文庫 → http://www.library.pref.nara.jp/sentai/index.html   この戦争体験文庫とも関わって、当館では、現代史関係資料の充実にも努め ています。「プランゲ文庫・新聞コレクション」奈良県の部(マイクロフィル ム版)、「プランゲ文庫・雑誌コレクション」奈良県の部(マイクロフィッシ ュ版)〈文生書院〉はその一環で収集したものです。  連合国軍最高司令官総指令部(GHQ/SCAP)は、終戦直後の1945年9月から、 わが国の占領政策を円滑に進めるために、新聞、出版、放送、映画、演劇等の マス・メディアだけでなく郵便、電話、電信等の個人的なメディアについても 検閲を開始しました。検閲を担当したのは、民間検閲局(CCD)で、国内と朝鮮 半島を4つの地域に分けそれぞれの地区に司令部を置き継続的な活動を行いま した。新聞、出版にはプレスコードが発令され、各メディアは発行物を事前に CCDに提出し検閲を受けなければなりませんでした。後に事後検閲に変わりま すが、制度自体は占領政策が終わりに近づいた1949年10月まで続きます。         この間提出された資料は、膨大な数にのぼりました。当時GHQ/SCAP参謀第U 部の歴史課にいたゴードンW.プランゲは、これらの資料の歴史的価値に着目 し、上層部に対して彼が在籍するメリーランド大学に譲渡されるように働きか け承認を得ます。1950年から1952年にかけて運ばれた資料の数は、木箱500箱 とも600箱とも言われています。1978年9月、大学当局によってこれらの占領 期資料は、プランゲの名前を採って「ゴードンW.プランゲ文庫」と名づけら れました。同文庫のホームページによれば、所蔵内容は、新聞18、047種、図書 とパンフレット約71,000点、雑誌13,799種、報道写真約10,000枚、ポスター90 枚、地図約640枚にも達します。 ●メリーランド大学マッケルディン図書館プランゲ文庫 → http://www.lib.umd.edu/PRC/prangejapan.html 「プランゲ文庫」の資料のうち雑誌は、同大学と日本の国立国会図書館との共 同作業によるマイクロ化が6年の歳月をかけて1997年に完成。新聞は、国際交 流基金日米センター他の機関から助成を受け1999年に7年の歳月をかけてマイ クロ化されました。当館が所蔵している「新聞コレクション(マイクロフィル ム版)」、「雑誌コレクション(マイクロフィッシュ版)」はその成果に基づく ものです。また、雑誌目次のデータベース化(「占領期雑誌記事情報データベ ース」)は、2000年から早稲田大学の山本武利教授を代表として進められ、200 5年3月に完成し公開されています。 ●占領期雑誌記事情報データベース → http://prangedb.kicx.jp/ さて、当館所蔵の奈良県編には、当時奈良県内で発行されていた新聞が132種 、雑誌が84種収録されています。これらはすべてCCDの第2区司令部(大阪) に提出された資料ではないかと思われます。新聞の中には現在も続く全国紙奈 良版、『大和タイムズ』(現『奈良新聞』)、『奈良日日新聞』、『解放新聞 』奈良版、『天理時報』等も見られますが、創刊年から戦後新たに誕生したと 思われる新聞が大半を占めています。種類も学校新聞、団体紙、組合機関紙、 宗教紙、業界紙、ミニコミ紙と多彩で、『馬見図書館月報』(村立馬見図書館 )といった図書館広報も見られます。一方雑誌も、『ビブリア』、『天理大学 学報』等の大学研究誌をはじめ、『奈良県月報』、『奈良県教育』等の自治体 発行誌、少年少女雑誌、女性誌、宗教団体誌、文芸誌等と多彩です。新聞同様 戦後雑誌が大半ですが、天理教関係団体の発行誌が多かったこと、特定の出版 社がいくつもの雑誌を発行していたことが分かります。  山本武利氏は、終戦直後は「新興紙、地方紙の時代」であった。これが「『 プランゲ文庫』にも反映した」と述べておられます。これは奈良県でも同様で あり、雑誌についても当てはまると言えるでしょう。同文庫には、当館や国立 国会図書館でも所蔵していない数多くの奈良県資料も収録されています。「プ ランゲ文庫」は、検閲制度の副産物ではありますが、ゴードンW.プランゲの 慧眼どおり、終戦直後の日本社会、地域社会を知る貴重な歴史資料ともなって います。  なお、「プランゲ文庫」所蔵の図書については、現在『児童書目録』(約8 ,000点収録/文生書院)と『教育図書目録』(約10,000点収録/文 生書院)が発行されています。        【参考文献】 ・高見順著『高見順日記』第5巻(勁草書房) ・山本武利著「占領下のメディア検閲とプランゲ文庫」(『文学』第4巻第5 号 岩波書店)  ・ニチマイ編『メリーランド大学所蔵プランゲ文庫展記念図録』(ニチマイ) ・文生書院〔編〕「プランゲ文庫・新聞コレクション」「プランゲ文庫・雑誌 コレクション」解説 ほか (もりかわ ひろゆき) ■図書情報館トピックス■ #図書館劇場U第3幕申し込み受付中  日 時 9月22日(土)13:00〜16:00  会 場 県立図書情報館1階交流ホール  テーマ 「西行と桜」  お申し込みなど詳細は、  http://www.library.pref.nara.jp/event/librarytheater.html  をご覧ください。 #企画展示(2階メインエントランスホール) □「奈良のむかしばなし」展を開催しています。19日(日)まで。   http://www.library.pref.nara.jp/event/exhibition_k.html#STORY □28日(火)〜9月2日(日)、「ならどっとFM78.4 ラジオのいまむ かし」展を開催します。期間中、9月2日(日)に番組公開収録も行います。 □21日(火)〜9月2日(日)、「平成19年度人権啓発ポスター・標語優秀 作品」展を開催します。 #図書展示(3階ブリッジ)   □図書展示「石井桃子さん100歳−おはなしとともに」を開催していま す。30日(木)まで。     http://www.library.pref.nara.jp/event/exhibition_b.html#ISHII #図書情報館ITサポーターズによる「パソコン水曜倶楽部」  ITサポーターズが運営する利用者交流の場です。今月2回目は、本日です 。事前申し込みは不要です。 詳しくは、   http://www.library.pref.nara.jp/newlib/supporter/wedclub.html  をご覧ください。 #図書情報館ITサポーターズによる「ウィークエンド倶楽部」が始まります 。毎月第2土曜日、第4日曜日に、セミナールームで開催するITサポーター ズが運営する利用者交流の場です。水曜倶楽部同様事前申し込みは不要です。  今月2回目は、26日(日)です。 詳しくは、   http://www.library.pref.nara.jp/newlib/supporter/wedclub.html  をご覧ください。 #戦争体験文庫資料展示「軍隊と地域4 奈良の戦争遺跡−奈良聯隊/奈良海 軍航空隊ほか−」開催中。9月27日(木)まで。3階戦争体験文庫で。  詳しくは、 http://www.library.pref.nara.jp/event/exhibition_b.html#W_2007_03 をご覧ください。 #奈良商工会議所と共催で、『経営無料相談会』を開催しています。  来年3月まで、毎月第1、第4土曜日の13:30〜16:00に3階グル ープ研修室で行います。今月2回目は、25日です。事前申し込み優先。  詳しくは、   http://www.library.pref.nara.jp/event/koen.html#BUSINESSPLAN  をご覧ください。 ■情報BOX■ ○新着図書情報  月に1度更新します。下記ページをご覧ください。  http://www.library.pref.nara.jp/search/newarrival/index.html ○下記資料の一覧をホームページでご覧いただけます。ご利用ください。  オンラインデータベース/CD-ROM   http://www.library.pref.nara.jp/search/onlinedb.html  所蔵新聞等   http://www.library.pref.nara.jp/search/shinbun.html  所蔵の国土地理院地形図   http://www.library.pref.nara.jp/search/mapsearch.html ○ホームページのビジネス支援のページ「B−SIDE」、皆さんのビジネス や調査にお役立てください。また、ご意見、ご感想をお寄せください。   http://www.library.pref.nara.jp/reference/biz/b-side.html ○館の有料施設の予約を受付けています。詳細は、県立図書情報館ホームペー ジの有料施設利用案内のページをご覧ください。 http://www.library.pref.nara.jp/guide/use_guide01.html セミナールーム及び交流ホールについては、県・市町村共同運営による施設予 約システムからインターネットにより予約することもできます。インターネッ トで予約を行うには事前の利用者登録が必要です。詳しくは施設予約システム の利用案内をご覧下さい。 https://e-kotonara.jp/portal/jsp/index.jsp ■これも図書情報館(34)■  図書情報館で借りた本が地元の施設で返却できることをご存知ですか? 図書情報館に来て必要な資料を借りたけれど、返却に行くには少し遠いなと感 じていらっしゃった方に朗報です。 当館では、今年の4月から、もっと気軽に図書情報館をご利用いただけるよう 、 図書情報館でお借りになった資料を県内32ヶ所の市町村立図書館(返却 施設)などを経由して返却できるようになりました。 このシステムは、県内の各返却施設の窓口に図書情報館で借りた資料を返却日 までに持参していただき、窓口に置いてある「奈良県立図書情報館資料遠隔地 返却票」に必要事項をご記入の上、返却資料と一緒に各施設の窓口に直接お渡 しください。受付後、返却票の控をお渡ししますので、お受け取りください。 各返却施設に資料をお返しいただいたあと、県立図書情報館で返却処理を終 えるまでの間は貸出中の扱いになりますので、その間は新たな貸出しができな い場合もあります。ご注意下さい。 くわしくは、下記の当館HPの遠隔地返却サービスをご参照下さい。 http://www.library.pref.nara.jp/guide/enkaku.html (にしかわ けいこ) ■図書情報館−職員独り言(34)■ 司書は、情報を探すプロです。このプロ魂をプライベートでも燃やしてしまう ことがあります。友人たちと「おいしいお肉を食べに行こう!」という話にな ったとき、まずブランド牛にはどんなものがあるのかを調べます。大和牛、榛 原牛、伊賀牛、松阪牛、三田牛、神戸ビーフ・・・。次に「一体どうちがうの ?」を調査。実は素牛は但馬牛であるものが多い。ではどれも似た味かと言う と、但馬牛の中でもランクが上の神戸牛は、とろけるようなやわらかさらしい し、伊賀牛はその昔伊賀忍者も食べたらしく、きめ細い霜降りが特徴。松阪牛 はビールを飲ませて育て、甘味のある風味が特徴で、大和牛は味にこくと深み があるらしい・・・。そんなことを調べていると「国産牛と和牛の違いってな んやったっけ。」なんてことも気になりだして追加調査。和牛とは種類のこと をいい、日本古来の食肉用牛の「黒毛和種」、「褐毛和種」、「日本短角種」 、「無角和種」の4種のこと。ちなみに但馬牛は黒毛和種。国産牛とは産地の ことで、生まれが外国であってもどのような種類でも最後に日本で飼育されれ ば国産牛。   しかし、調べれば調べるほど、どの牛もこだわりの育て方をされてとても おいしく、そしていずれもそれなりの値段であることがわかり、結局どこに食 べに行くかを決めかねる結果に・・・。                           (たかつじ あゆみ ) ■連載「図書情報の文化史」素描編■ 第52回 『三教指帰』(2)                            館長 千田 稔 書名にいう「三教」とは、儒教、道教、仏教のことである。「指帰」とは、指 意(おもむき)の帰するところ、つまり究極の真理という意味である。本書は 、序、巻上、中、下から構成されている。巻上は儒教、巻中は道教、巻下は仏 教について論じられている。結論は、三教の中で仏教が最もすぐれているとす る。  この書の叙述の特色は、ドラマ風に仕立て上げられて、登場人物が語るとい う手法をとっている点である。このことも空海の非凡な文才によるものである 。序には、「亀毛(きもう)先生に登場願って儒教を代表する客人(まろうど )とし、兎角(とかく)先生をお願いしてその主人役とした。虚亡(きょむ) 隠士に登場願って神仙の道に入る道教の教理を述べてもらい、仮名児(かめい じ・仮名乞児(こつじ))をわずらわして世間を出離する仏教の教理を説明し てもらい、ともに論陣をしいてそれぞれにならずもの蛭公(しつこう・蛭牙公 子)をいましめ(るという構想の本書を執筆)し)た。」(現代語訳は福永光 司。以下特に断らないかぎり同氏の訳による)とある。(つづく) ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 【 県庁各課等のメールマガジン 】 ◇ 読者登録をお願いします!◇ ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 読者登録はこちらから! http://www.pref.nara.jp/c_etc/mailmag.html ★「大仏さんのつぶより情報」 (広報広聴課) ★「まほろば*地域づくり情報」(交流政策課) ★「ボランティア情報誌Vio」(県民生活課) ★「健康21ファンクラブ通信」(健康増進課) ★「情報発見メルマガ編」   (中小企業支援センター) ★「E−夢 はっしん!」  (教育委員会) ★「代官山で愛ましょう!」  (奈良県代官山iスタジオ) ★「ならの農業と園芸」    (県農業総合センター) ★「子育てメールなら」    (県子育て家庭サポートセンター) ★「メルマガ・スマイル」   (県母子・スマイルセンター) ★「ワーク・ならネット」   (雇用労政課) ■編集後記■ なんだかんだ言っているまに、8月も半ば、今日は終戦記念日です。戦後の姿 をめぐっては、さまざまな評価がなされ、政治の動向にも大きな結節点になっ ているようです。ただ、体験のない戦後世代が、極めて両極端な評価で声高に 叫んでいる様子は、滑稽でもあり、思考停止がどんな状態か見せつけられてい るようです。当館の戦争体験文庫の資料を見ていると、そんな浅薄さが及ばな い何ものかを感じることができます。 県立図書情報館メールマガジン「Lib Info NARA−奈良県立図書情 報館通信」第52号をご覧いただき、ありがとうございました。次回第53号 は、9月1日(土)に配信する予定です。皆様、ご愛読、よろしくお願いいた します。 =================================== ◎このメールマガジンへのご感想、ご意見などは、下記メールアドレスまでお 願いします。 *原則として、返信はいたしませんので、あらかじめご了承ください。 ◎このメールマガジンは、「まぐまぐ」を利用して発行しています。  http://www.mag2.com/ 「新着情報版」「ウィークリーまぐまぐ」の配信  が不要な場合は、こちらで解除できます。 http://www.mag2.com/wmag/ ◎ご覧になるコンピュータの環境によって、文字がずれて表示される場合の  対処については、こちらへ。 http://www.mag2.com/help/r107.html 当マガジンの解除は、こちらへ。 http://www.library.pref.nara.jp/netservice/mailmagazine.html =================================== ■□===========================■□ 発行:奈良県立図書情報館 〒630-8135 奈良市大安寺西1丁目1000番地 TEL 0742-34-2111(代表) FAX 0742-34-2777 http://www.library.pref.nara.jp e-mail info@library.pref.nara.jp ■□===========================■□