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さまざまな戦時国債(その1)

庶民から広く小口の資金を集めるべく、郵便局でも国債が取り扱われるようになり、抽選による割増金によって射倖心をあおる手法も取られました。また、「支那事変終了後一ケ年ヲ経過スル迄ハ払戻サザル」ことを定めた貯金や、国債を買うための貯金も生まれています。こうした政策は、一見順調に進んだかに見えました。昭和15年の段階で、経済評論家高橋亀吉は、戦後政府は多額の借金を抱えることになるものの、「戦争に勝利を占める限り」その分国力も増大するので償還に問題ないだろうとしています。

しかし、戦局の悪化とともに、厳しい統制価格の裏で裏市場が生まれ始め、生産のために提供された資金が、空襲や資材不足のため行き場を失い国債購入にまわるといった状況すら生じたといいます(大蔵省『昭和財政史Ⅳ 国債』)。こうした矛盾は、昭和20年終戦直前直後の放漫財政と相まって、またたくまに数年で物価が何十倍になるといった未曾有のインフレに結びつき、預金や債券の使用価値は大きく下がりました。今日、未換金の戦時国債が多く「資料」として残るのもこうした事情によるものです。

三分半利公債證書(五拾圓)

三分半利公債證書(五拾圓)(表)
三分半利公債證書(五拾圓)(裏)

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